「つくる」「科学的経営」の次に来る「アート」とは?
速読記憶術・名著
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
名門美術学校に、グローバル企業の経営幹部が殺到している…?
そんな話から始まるこの本に、大きな衝撃を受けた。
「クラフト」と「サイエンス」
通常の企業は、まずは製品・サービス開発から始まる。
「つくる」すなわち、「クラフト」だ。
昔のコンサルタントは、元「クラフト職人」。
引退した経験豊富な職人が、「こういう風につくれば良い」「業務改善すれば良い」とアドバイスをしていた。
老人が多かったため、「グレイヘアー(白髪の)コンサルタント」とも言われた時代だ。
そこに、マッキンゼーやボストン・コンサルティングというスターが現れる。
彼らは「経営指標」を持ちこみ、ビジネスをどのように改善すればいいか、どの事業に注力すればよいかなどを分かりやすく教え始めた。
ロジカルシンキング、MECE…
必要な情報を集め、論理的に思考し、解決策を生み出す。
そうした手法はまたたく間に多くのクライアントを獲得し、コンサルティングサービスが世界中に広まった。
今までのコンサルティングが通用しない世界
しかし、ロジカルシンキングやMECEだけでは行き詰まりが来てしまった。
コンサルティング手法の最大のポイントは「再現可能な科学」であること。
「サイエンス」だ。
だから「同じ情報を与えれば、同じ結果が導かれる」ことになる。
手法が一般化し、多くの会社が身に付けてしまったため、結局、差別化が困難になったのだ。
さらに
数字という分かりやすい指標だけを経営陣が追う弊害もある。
会社が儲け、株価を上げることに集中すると、会社のモラルが崩壊してしまうのだ。
厳しすぎる目標を与えられた現場は、数字の偽造等、自然と不正に手を染めてしまうのである。
「アート」とは、測定できない「真・善・美」
そこで必要になってくるのが「アート」だと著者は主張する。
アートはサイエンスとは相性が悪く、数値で測定できるものではない。
しかしアート的な感性、こだわりの宿ったプロジェクトや製品こそが、世の中を動かしていくのだ。
・音楽や携帯の世界を一変させた、アップルのipodやiphone
・世界一にも輝いたデザインのマツダのロードスター
感性やこだわりとは、いわば
「真・善・美」である。
開発者や経営者がこだわり抜くことでこそ、生み出されるのだ。
アートの力を鍛えるには?
・絵画をありのままに鑑賞する、多面的に見る
・哲学を自分でなぞり、考える
・色々なところに行って直接体験する
・楽器を弾く
・詩を読むこと
これらは一見非効率で、ビジネスに役立つものではない。
しかし「アート」の力を鍛え、自分なりの「真・善・美」を構築するのに必要なものなのだ。
数字だけを追求するビジネスではなく、自分なりの「真・善・美」を追求する。
それこそが今後の在り方なのではないかと、強烈な気付きをもらった本だった。