羽生善治九段 平成最初と最後のNHK杯で優勝!

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本日NHK杯で優勝した羽生善治九段

本日3月17日、第68回NHK杯テレビ将棋トーナメントの決勝戦で、
羽生善治九段(48)が優勝し、最多記録となる、11回目のNHK杯優勝を果たした。

羽生九段は次の記録も作ったことになる。
・1989年3月の平成最初の年に初優勝!
・平成最後の今年、2019年3月に優勝!

さらに羽生九段は一般棋戦の優勝回数が45回となり、 大山康晴十五世名人と並んでいた44回を抜いて、 単独1位となった。

つくづく、記録の人である。

ドラマチックな「残念!」記録

羽生九段の記録は輝かしいものであるが、一方で
「惜しい!」記録もたくさんある。

・2005年度のA級順位戦では8勝1敗の成績だったが、
 プレーオフで敗れ、名人挑戦ならず。
 8勝して名人挑戦できなかったのは、順位戦史上、唯一のケース。

・第21期竜王戦への挑戦では、勝てば初代永世竜王、
 かつ永世七冠獲得だった。
 しかし七番勝負で開幕3連勝したものの、そこから4連敗。
 しかも将棋界初の、タイトル戦 3連勝4連敗であった。

 さらに最終局(負けた局)は、将棋大賞の名局賞を受賞。
 羽生九段にとっては同賞創設から3年連続3回目の受賞で、
 いずれも敗局での受賞となった。

・永世七冠・国民栄誉賞獲得した2018年に、
 第31期竜王戦で敗れ27年振りの無冠に。
 タイトル獲得は、99期(歴代1位)であり、
 100期の獲得が確実視されていたものの、更新が止まる。

とても羽生九段らしい、羽生九段にしかできない記録だと思う。

今行動しないこと、変わらないことが最大のリスク

10年ほど前、当時の羽生名人にインタビューし、
「結果を出し続けるために」という本を出させていただいた。

改めてこの本を読み返し、まさにその通りのことをされていると思った。

羽生九段は、30年間、業界のトップを走り続けている。

そして「勝つための将棋」ではなく、
常に「最高の将棋」を追い求めている棋士だ。

リスクを取って、最先端の戦法を常に自分の将棋に取り入れつつ、
自分らしいアレンジや改良をし続けているのだ。

「結果を出し続けるために」から、その考え方をご紹介したい。

「保守的な選択は、10年後に最もリスクが高い」

リスクを抱えた指し方は、
目先では損をするように見えるかもしれませんが、
将棋の世界に限ってみれば、長期的には、
そちらのほうが間違いなくよいでしょう。

10年先のことを考えると、一番保守的な指し方や作戦は、一番悪い選択のはずです。

しかし10年先のベストの選択は、今の目で見ると、一番リスクが高いかもしれません。

それゆえ私は、アクセルとブレーキをいかに加減するか、
どこまでアクセルを踏んで、どこでブレーキを踏むか、
リスクをどう取っていくか、いかにリスクを分散させるか、
ということを考えながら、日々の将棋を指しています。

さらにリスクを取る際の注意点も引いてみよう。

リスクを取るときの注意点

「無謀ではない、リスクの取り方」

もちろん、目の前のリスクを何でも取っていくのは無謀というものです。
リスクの取り方について、次の5つがポイントとなります。

1)リスクは小出しで取る

基本的には許容できるリスクを取っていくべきなのですが、実は「安全なリスクの取り方」があります。

それは、毎回少しのリスクを取り続けるというものです。
1回1回は小さいリスクを取り続けて、
それを20回、30回と繰り返せば、気がついてみると
今いる場所が、前にいた場所とはまったく違う場所に
なっていることになります。

これが安全なリスクの取り方です。

2)リスクを取ることへの恐怖との付き合い方

リスクを取ることで何が怖いのかというと、
「リスクを取って失敗する」という結果が怖いわけです。

だから何かリスクを取る前に、
「このリスクを取れば、ある程度の確率で失敗する、負けてしまう」
という前提、覚悟を持っておくと、恐れはなくなるはずです。

3)リスクを取ること自体の快感には注意

リスクとの付き合い方で難しいところは、
リスクを取ること自体が楽しくなってしまう可能性があることです。

「スピード狂」というのはまさにそういうことです。

とんでもないスピードで走ることそのものに、
ものすごい喜び、楽しさを感じてしまう。
これは、あまりに行きすぎると、命を落とす危険性もあります。

それこそ本人にとって、リスクが大きすぎます。

4)結果だけではなく、「納得できるか」

あえてリスクに踏み込むことが、大きな流れをつかんだり、
勢いを呼んだり、ツキを呼ぶこともあります。

それが理屈だけではなく、さまざまなことも動かしています。
実はリスクを取ってよかったかどうかは、
結果オーライになっているものも多いのです。

だからうまくいくかどうかだけではなく、
自分自身が納得できるか、満足できるかという視点でも、
ものごとを見るとよいでしょう。

たとえ結果が出なかったとしても、
その選択肢を選んだことに満足できるか、納得できるか。

たくさんの選択肢の中から、結果を別にして、
いかに自分が納得できるものを選ぶかということが大切です。

5)時代や環境に合わせてリスクを取ること

外側で起こっていること、進行していることとの関係も非常に大事です。

時代や環境の変化が非常に速ければ、
それに合わせてリスクを取らなければならないし、
凪(なぎ:風がおさまって波の穏やかな状態)のような状態ならば、
どんなにリスクを取っても状況が動かないわけですから、
じっとしていればいい。
つまり、それらにどのように合わせていくか、ということです。

このように、内側と外側の両面を見ながら、
リスクを取るべきかどうかを決めていくのがよいでしょう。

価値を創るために将棋を指す

羽生九段は自身が将棋を指す意味について、次のようにも語っている。

だから、本質は勝つためというよりは、価値を創るためです。
価値を見出すことに非常に意味があり、
さらにそれを見てくれた人が、感動した、面白かった、
喜んでくれた、というところにまた意義があります。

そのように一生懸命やった延長上にこそ、
そうした感動や喜びがあります。

これは、「ファンを喜ばせるために将棋を指している」とは、少しニュアンスが違っていて、「自分がベストを尽くし、自然体で将棋を指したことに対して、ファンに喜んでもらえる」
と考えていますし、それを目指していきたいものです。

まさにこの通りのことを、30年間続けてきた羽生九段。

平成最初と最後のNHK杯で優勝という記録は、
こうした姿勢から生まれたのだ。

我々も、リスクと付き合いながら、
大きな価値を生み出していきたいものである。

本日は嬉しい一日となった。

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